UNDER SKY
やわらかい、でも、冷たい風が吹いた。
今日は秋晴れだ。
ふる錆びた階段を下りる。
なんとなく、気分をあげたくなって鼻歌を歌う。
サビ辺りになって土手に出た。
「お兄さん、機嫌いいね」
「!?」
いきなりかけられた声に、音を外す。
声のした方向をみると、高校~大学生くらいの青年がいた。
片手には一眼レフを持っている。
部活かサークルの活動だろうか。
「・・・何、かな」
「ふふ」
振り向いてにかっと笑った顔は、格好いいのレベルに入る優男だった。
もちろん、いい意味で。
「間違えた。ちょっと落ち込んでるでしょ」
「・・・それは、俺のこと?」
「お兄さん以外にだれがいるの?」
「・・・」
まさか、落ち込んでるのが顔にでているのか・・・?と、顔に手を添える。
青年はそれきりカメラのレンズに目を向けたまんまだった。
それだけ?
異様に青年のことが気になった。
「何撮ってるの?」
「ん?・・・空」
「・・・空?」
今日の空は雲ひとつなく、いっそすがすがしいくらいだった。
何もない雲に何の魅力があるのだろうか。
「・・・空ってさ、広いよね」
「・・・?」
何を当たり前のことをって思ってる?と、青年が微笑んだ。
「お兄さん、何で落ち込んでるのか知らないけど、こんなに広い空見てると自分のことなんてちっぽけに感じてこない?それに、」
ここからは受け売りだけど、と咳払い。
「空は広い心で僕らの悩みとかを共有してくれるから。いろんな表情で僕らと向き合ってくれるんだ。」