星空の四重奏【完】
『おい、俺が怖いか?おまえと同じ顔、同じ声の、俺が』
『そんなわけないよっ』
『嘘つけ。震えてるぞ』
『違っ……これは……』
『おまえはあいつに似たようだな。守備的なあいつと、攻撃的な俺。もとは共同体だったが、分離してやったのさ。あんな女々っちいやつがメインじゃ、俺としては不愉快だったしな。
けどな、フリードがこっちに飛ばしてくれたおかげでこうしてどさくさに紛れて分離できた。さあ、本当はおまえは俺とあいつ、どちらの化身かな?』
『マーク……だよ』
『俺だってマークさ。俺たちは同じ。だが違う。あいつは光、俺は闇。俺はあいつの憎しみや怒りの部分だ』
いきなり目の前の俺にパッと襟元を離された。自分の体重でゴツンと背中をぶつける。
『……っつ!』
『痛いか?俺はそれよりも濃い闇だ。負の感情からできた影。そんな俺の姿をそのまま見られるということは……いくら幼いとはいえ賢いおまえだ、言いたいことはわかるよな?』
『……い、やだ……』
『ハッ。現実逃避も大概にしろ。現実を見ろ、俺を見るんだ。
おまえは少なくとも、あいつだけの化身じゃない。そのことを頭に叩き込んでおけ』
滲んで霞む視界の中から俺を罵っていたやつの姿が消えた。そして、入れ代わるようにしてまた同じ顔がぬっと視界に現れた。俺は訳もわからずにただガクガクと震えるばかり。
『おい、大丈夫か?なぜこんなところにいるんだ。誰かに呼ばれたのか?……って、なぜ泣いているんだ。迷子になったのか?おい、なんか言えよ』
『……──』
『あ?聞こえねーよ』
『──きみは、誰?──どうして、同じ顔なの?』
『……は?なぜだ?どうなってるんだ……まさか浄化してないよな』
そうだ、俺は……俺は……
このときと、マークを忘れたときと、ゲルベルの森のときと……
浄化を、3度経験したんだ──