星空の四重奏【完】
あ?俺の頭ん中がどうなってるのかわからない?
そんなの俺にもわかんねぇよ。ひねくれてんだかそうでないかわからないってか?
あのな、雑草のこと言ったよな俺。生えたいから生える。邪魔だから引っこ抜く。
雑草だってな、畑に生えたいから生えるんじゃねぇよ。栄養を求めて生えるんだ。あ?まだいまいちわからない?
ほら、野良犬いるだろ?野良犬。野良犬が店の野菜を盗みました。それを店主が追いかけて棒で叩きます。しかし、野良犬はそれで瀕死の怪我を負い死んでしまいました。
さあ、どっちが悪い?
野良犬は生きるために野菜を盗んだ。目の前に食べ物があれば、それを口にくわえてもそれは悪くないだろ。
生きるために手段は選ばないっつーことだ。野良犬はそれを悪いことだって認識してねぇんだから。
一方、店主は野良犬が野菜を盗むのは悪いことだと思ってる。商売にならねぇからなそれじゃ。
正当防衛として、野良犬を追いかけ棒で叩く。それを店主は悪いことだと思ってない。ましてやその後死んだことを知ったとしても、自業自得だと鼻で笑う。
なあ?不条理だろ?
先に手を出したのは野良犬だろ?店主は悪くない。いやいや、死なせる程叩いた店主が悪い。
解錠することを凄いと思った俺。見事に解錠して喜びの余韻に浸っているところに飛び込んできた拳。罵声。
親は俺を悪いと言った。俺のどこが悪いんだ?おまえらだって悪いだろ。
俺から言わせてもらえば、無精卵を機械的に産ませてるおまえらの方が悪いと思うね。
鶏にちゃんと謝ってるのか?大事な子孫を残すために産ませてあげられなくてごめんねって。
鶏はもしかしたらこんな窮屈なところに閉じ込めやがって、って親を悪いと言ってるかもしれない。でもそれを親は悪いって感じてない。当たり前だって思ってる。そこにいるのが当たり前。
今の俺は言ってやりたいね親に。俺に謝る前にまず鶏に謝れ、って。
まあ、それが農家の仕事だからそれ自体を否定してるわけじゃねぇよ。そんなことしたら世間から否定されるわ。じゃあ卵食うなって話になるしな。
難しいよなー。なんでこんなこと俺が真剣に言ってんのかわかんなくなってきたぜ。
まあ、要するに、不条理な世界で盗賊やってたのも悪かぁなかったなっつー話だ。