ナンパ男がしつこい件について
椋太郎の普段の駄々をこねるような「やだ」の言い方じゃなくて、
純粋に。
真剣に。
椋太郎は「やだ」と言った。
あたしは少しだけその言葉を期待していたことは否定できなくて
色んな意味をこめて「ごめん」と呟いた。
「あたしこそ、かっとなって全部否定してた」
頭に優しく乗る大きな手のひら。
「謝るな。平気そうな顔するな。」
無言で、椋太郎を抱き締めた。
背中に手を回すと、椋太郎もぎゅっとしてくれたことがわかる。
精一杯、強く強く抱き締めた。
多分椋太郎にとっては痛いくらいに
相変わらず良い香り…