ナンパ男がしつこい件について
背中が見える。
「椋太郎!」
叫んでも無視。
「椋太郎…」
なんで、毎回毎回追っかけてるんだろ…
息が切れる。
どんどん遠くなっていく背中。
「はぁ…」
その場に座り込んだ。
下を向いて呼吸を整える。
何やってんだ、バカ。
通行人が歩いてくる音がした。
だんだん近づいてくる。
怪しまれないように立ち上がろうとすると、
「何回でも追いかけくるんだね、本当」
「え」
「そろそろさ、『今日くらいいっか』ってなりなよ」
顔をあげると、困った笑顔をした椋太郎。
「ごめん。全部嘘」
頭をそっと撫でられる。
「う、そ…?」
「さっきの電話は友達から」
「………ほんとに?」
「え、うん」
そりゃそうでしょ、みたいな顔で頷く。