ナンパ男がしつこい件について
「ま、追いかけてこなくても駅で待ってるつもりだったけど」
余裕の表情でこっちを見てくる。
「もう今後絶対椋太郎、追いかけない!」
「大体さんざん俺唯花をナンパしてるじゃん。今さら追いかけないなんて、あるわけないでしょ」
…確かに。
付き合う前も付き合ってからも、常にこいつはいる。
あたしの首の後ろに椋太郎の腕がまわる。
「俺、ホストにならなきゃよかったってさっき思った」
「……なんで」
「だって…、俺あんな唯花知らないもん」
……………
『あんな』あたし。
「普通の男と話してる唯花が、あんなに普通だなんて思わなかった。
どんだけホスト嫌ってんのか、今さらわかった」
少しだけ顔を歪める椋太郎。
「別に」
「…………」
「別にあたしが不器用なだけだし」
「不器用って…」
「椋太郎は椋太郎で、椋じゃないし」
そりゃあ今でもホストっていう仕事は大嫌いで
椋太郎の周りにいるような大人には近付きたくない。