ナンパ男がしつこい件について
「彼氏いるのかよ、めんどくせえ」
「戻ろ」
だるそうに公園の方へと向かう。
「みんなとバーベキューは?」
「別に。お腹一杯になった」
椋太郎は窓枠に腕をかける。
「本当、唯花ちゃんは寂しがり屋だね」
「……」
「?」
あたしの顔を覗きこもうとする。
「こっこっこっち見るな…」
『椋太郎に助けてもらう』という選択肢が一切思い付かなかったあたしは、
まさかあんなところで椋太郎が登場するとは思ってなくて普通にかっこいいと思ってしまった。
「耳まで真っ赤…」
「あーもーやだ」
あたしがしゃがみこむと、車を出た。
「知らない人に話し掛けられても無視しなさいって言われなかった?」
「お母さんがそんなこと言うわけないでしょ」
そりゃそうか、と言う。
「まあ…でもだめだぞ?」
頷くだけ頷いた。