ナンパ男がしつこい件について
だからこそ、不安だった。
「椋太郎に会うまで、やめようと思ってた。他の楽な専門学校行こうって思ってたんだけどさ…」
「そうなの?」
「うん。でも、まだ書類も出してなかったし、諦めきれなくて。椋太郎がいたら頑張れる気がして…本当に入りたい学校にした」
椋太郎はしばらく黙ったあと、
「嬉しいよ、ほんと」
さっきよりも甘い声で言ってくる。
「俺、そんなこと言われたことない」
「ホストってそういうこと言われないの?」
「まずないかな。俺、ノリが良い男のお客さんにもランキングあげてもらってたし」
ホストって男の人も行くんだ…
「…受かったら、巧と会おうと思う」
「巧さんと話す?」
「うん。まあ、その時の気分だけど」
付け足すと、クスッと笑った。
「巧って今なにやってるの?」
「経営だよ。ホストの経営。」
経営、か。
「巧さんはすごい人だよ。女癖が酷くなければ、だけど」
その冗談に笑えるようにまではなった。