ナンパ男がしつこい件について
良い香りがする。
…椋太郎の匂いだ。
「でも今は、椋太郎に会えてよかった」
「俺も」
あたしの髪を指でとかしていく。
「…唯花と会えてよかった」
クスッと笑う。
「ほんとに?」
「もちろん」
目が合って、触れるだけのキスをする。
何となくはにかんだ。
もう一度顔を近づけて唇が触れようとした瞬間、
携帯が鳴る。
「…こんなときに」
あ、華和…
『もしもし唯花!?大丈夫!?』
珍しく叫ぶように言う華和。
「うん、椋太郎が来てくれたから」
椋太郎の手を握ると、椋太郎も握り返してくれた。