ナンパ男がしつこい件について
そんなこと言われると、あたしも嬉しい。
って言うのはなんだか照れ臭い。
「何にやけてんの?」
椋太郎は不思議そうに聞く。
「別に…」
そう答えると、またペロッと首筋を舐めた。
「それ、くすぐったい」
「どれ?」
え。
「どれがくすぐったいの?」
そう言うと、顔をあげた。
言えない。
そんなこと恥ずかしくて言えない。
「あれぇ?無視?」
…この野郎…
「…な、なんでもなかった」
意地をはって言うと
「そっか。じゃあ今日は帰るわ」
「え?」
「だってテスト近いし、俺高卒だしろくな勉強してないから教えられないしさ」
黒いパーカーをはおって、立ち上がる。
これで無視すると本当に帰るんだよな、椋太郎。
「椋太郎」
あたしも立ち上がる。
…いっつも椋太郎の策略にはまってたまるか。