ナンパ男がしつこい件について
車のドアを開けてもらう。
「どうぞ、お姫様?」
少しだけ、背伸びをする気分だった。
「ありがとう」
そう言って学校でならった気品を思い出せるだけ最大限に活かす。
隣の運転席に座った椋太郎が、
思い出したように小さな箱が渡された。
「巧さんから。誕生日おめでとうって」
巧からは実は毎年送られてきていた。
そして毎年送り返していた。
…今年は貰おう。
受け取って、すぐ開けた。
リボンをほどいて中を見る。
「…あたしピアス開けてないし」
中に入っていたピアスに突っ込んだ。
「開ける予定はある?」
「それは卒業したら開けるけど、」
そのピアスは小さくて音符の形になっている。