ナンパ男がしつこい件について
お母さん、また潰れてるのか。
肝臓がそろそろもたなくなってくるよ、年なんだし。
電車に乗りながら思った。
…あれから椋太郎は調子を取り戻して、何事もなかったかのようにしてる。
ただあたしの中にまだ気にかかってるだけで、じっと抑えた。
試験会場に着いた。
あたしとおんなじような高校生がたくさんいる。
「準1級…あった」
暗記本を読みながら階段を上がっていく。
ドアを開けて席についた。
携帯の電源を切っていると試験管が入ってきた。
多分バイトの大学生だろう。
「問題用紙を配ります」
顔もろくに見ないで受け取ろうとすると、
あたしの目の前でその人は止まった。
見上げると、宏哉さんがそこにいた。
宏哉さんも驚いた顔をしてるけど、
また普段の顔に戻って問題用紙を配った。
…こんなところで会えるなんて。