ナンパ男がしつこい件について
試験が終わると解答用紙を回収していって、
「終了です、解散してください」
宏哉さんをじっと見つめた。
解答用紙を持って部屋を出ていく。
そこにいた人達が帰っていく中であたしは携帯を起動させる。
着信…椋太郎からだ。
あとでかけよう。
「お、待っててくれた」
ドアを開ける音がしたと思ったら宏哉さんがいた。
「無視して帰っちゃうのもどうかと思って」
あと、そう言ってあたしは付け足す。
「前は椋太郎追っかけて帰っちゃってすいません」
「いいんだよ。たださ…」
?ただ?
「その彼氏大丈夫なの?」
「大丈夫って…」
「仕事ならわかるけど、それでもあんな帰り方してさ。唯花ちゃん必死に追いかけてたし。一緒にいて疲れるんじゃないかなって」
宏哉さんは笑顔だったけど、普段とは少し違った。
「振り回されてない?」
椋太郎に?
正直、振り回されてる。
でもそれは宏哉さんが言ってる、『振り回される』じゃないと思った。