ナンパ男がしつこい件について
「大丈夫です。椋太郎はバカだから」
「本当に?暴力とか、無理矢理何かされたとか…」
宏哉さんは優しい。
「一回もそんなことやってこないです」
自信をもって言えた。
あたしは椋太郎を信じてる。
いつもは一方的な信頼だけど、
「今までみたいにならないようにね」
「ありがとうございます。でも………大丈夫」
『大丈夫』を連呼するあたしに、
「その彼氏はいいやつみたいで良かった」
そう笑う。
「もうそろそろ行かないと、じゃあね」
宏哉さんは足早にいなくなった。
「…あたしも帰ろう」
帰る、と言っても場所はお母さんのところだけど。
外に出て椋太郎に電話をかけた。
いつもの如くすぐかかった。
『あんたか!寝取ったの!!』
それは、女の人の声だった。
「…え?」
『あたしの、あたしの大切な人なのに…』
頭が真っ白になった。
「なんのことだかさっぱり…」
『今さらとぼけるなこのバカ!!あんたなんか殺してやる!!』
………え?
一度携帯の画面を見た。
椋太郎だ、間違いない。
殺してやるって…
『あたしの旦那なのに!』
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だ、旦那!?