ナンパ男がしつこい件について
まだ静かだった。
変わったことと言えばお母さんが起きてることくらい。
三人の視線が椋太郎へと向いていた。
「…俺の携帯、返して」
片桐の彼女の元へと行ってそう言った。
「ごめん」
彼女は椋太郎に携帯を返す。
「唯花になんもしてない?」
いつもより低い声で言う。
「ごめん、つかみかかった。殺してやるとか言っちゃった」
誰もがその言葉に固まる。
「…………唯花はそんなこと言われるようなしたの?」
あくまで静かに、威圧的に言う椋太郎。
彼女は首を振った。
椋太郎は、片桐の方を向いて
一発殴った。
あたしはその様子にただ目を開くことしかできなかった。