ナンパ男がしつこい件について
天井を見つめる。
腕がほどかれた。
でも、あたしは絶対に振り向かなかった。
「いいよ。こっち向いて」
そう言う椋太郎の目はほんのり赤い。
「…バカ」
椋太郎は笑った。
「バカに言われたくない」
「椋太郎だってバカじゃん」
デコピンをされる。
「痛」
地味な痛みにおでこを抑える。
「…たく、かわいい」
「微妙に痛い」
椋太郎はそんなあたしを見て抱き締めた。
「さっきから痛いんですけど」
椋太郎の方を見ると髪を撫でてきた。
痛いとか痛とかしか言ってない気がする。