ナンパ男がしつこい件について
「おっさん舐めんなよ」
「うえ?」
屋上の扉が見えると、急に引っ張られて壁に押さえつけられた。
それは反射的に出た声だった。
ち、近いな…
「ほんっと、こんな格好…」
「こんな格好とは失礼な、アリスだぞ。女の子の夢…人の話を聞け!」
椋太郎はあたしの話なんて耳に入れず、耳を唇でカプッと挟んだ。
「やべ、最近唯花大人っぽくなってきてる」
「そんな急に成長してない…ん、それくすぐったい…」
肩をすくめると、耳から離れた。
「してるから、雰囲気が初めて会った時と全然違う」
「…そ、なの…?」
軽いリップ音をたててきて、心拍数が上がる。
「心臓、ドキドキしてるね」
…当たり前だ、バカ野郎。
あたしはこのむず痒い感じが嫌で、
椋太郎にキスをする。
奴は、目を見開いた。
「そんなことしたらやばい」
そう掠れた声で言われると、今度は椋太郎から唇に触れる。
片手があたしの顔の横にダンッと強い音を出して置かれた。
にゅるっと生暖かい感覚。
「ひっ…」
変な声を出してしまって、恥ずかしい
……なんて思えるのも一瞬のことだった。