ナンパ男がしつこい件について
「こういうのって嘘臭いけど、あたし嫌いじゃないんだよね」
「『唯花が合格しますように』か『唯花のどつく癖減りますように』かどっちにするか迷った」
それを聞いてどつく。
「まあどつく癖はもうどうしようも無さそうだし、違うことにしたけど」
窓からすこし肘を出して頬杖にして外に視線を送っている椋太郎。
本当に楽しそうな顔をして、目が炎によってオレンジ色になっていて、
髪の毛も明るく見える。
横顔、どうしようもなくかっこいいなあ、おい。
それからずっと、ステージを黙って眺めていた。
これが最後の文化祭だし
どうしても見ておこうと思った。
そしてそれが終わってから片付けを手伝いに行って
椋太郎について冷やかされまくった。
「いいなあ、あたしもあんな彼氏欲しい」
「そんなに毎日平和にすごせなくなるけどね」
あたしは苦笑いをする。
…椋太郎と出会ってから毎日何かがあるような気がする。
まあ出会う前もそんな感じだったか。
それにしても椋太郎の「願い事」なんだったんだろ。