ナンパ男がしつこい件について
「あんたの脳内どうなってるの」
「知らね」
そう言うとお互いを見合って、
お互い黙った。
こっちを食い入るように見てくる椋太郎。
その目にあたしが写っている。
その茶色の瞳は本当に綺麗で、
心臓がドキン、という音を出した気がした。
やっとおさまったはずの顔の紅潮がまた戻ってくる。
椋太郎の右腕があたしの首の後ろに架かる。
ギリギリまで顔が近づいて、
そこで停止する。
おでこがぶつかって、少し笑ってしまった。
そして、お互いの距離は大きくなっていった。