ナンパ男がしつこい件について
目線をそらすと、手首をぐっと掴んできた。
「やめろ」
その声は妙にまっすぐだった。
普段の片桐優雅とは全く違う。
「お前の母さんは『藪塚唯花』として、自分の娘だから愛そうと思ってるんだよ」
その言葉に、表情を強ばらせる。
「あんたに、言われることじゃない」
「散々聞かされてるんだよ、お前の事。何度泣いて、何度無理矢理笑ってると思う?」
その言葉に、目を大きく見開いた。
「もう巧さんに依存なんてしてないし、お前にちゃんと向き合おうとしてる」
あたしだって、
そんなこと気づいてた。
最近家に来るのも、無駄に話を聞いてくるのも。
「お前の『わかってる』って言葉がどれだけ自分の母親を傷つけたか、わかってんのか?」
その言葉に心が傷む。