ナンパ男がしつこい件について
後ろの椋太郎が静かになったような気がした。
漫画でも見てるのかな。
あ、わかった。公式か。
答えが出て少し嬉しくなっていると、
「唯花」
「何?」
「好きっていって?」
その言葉に冷や汗が出る。
そのセリフ、聞き覚えある…
振り向くと案の定見つけてほしくなかった小説を眺めていた。
「ブックカバー程度じゃ…ねえ?」
余裕を持った顔で言う。
「ほら言ってよ」
そのシーンは主人公が『好き』と言ってキスをするベタなシーンのはず。
「好きじゃない」
そう言うと「ふーん」と呟く。