ナンパ男がしつこい件について
「それにそんなに切羽つまらなくてもいいじゃん?」
「ま、まあそれはそうだけど…」
と言いながらも椋太郎を見つめる。
「?なんかあった?」
「椋太郎が頭よく見える」
「おいこら唯花?」
運転しながら片手でデコピンをしてきた。
「危ないからそういう行為はやめましょう!」
とあたしはおでこの地味な痛みに耐えつつ言う。
「それからデコピンの勢いを下げろ、まじで」
「それ以上無理」
前とそんな変わってないっていうかそのままじゃん、と思う。
徐々に専門学校が見えてきた。
「椋太郎」
「ん?」
「おっ落ちたらその時はよろしく」
最後の保険みたいなもののように言う。
「当たり前じゃん、だから安心して行ってこい」
「うん!」
その声が聞けただけであたしは大丈夫だ。
前みたいに面接もない。
その分筆記でどうにかしなくちゃいけないけど、結構勉強したし…できる、大丈夫。