ナンパ男がしつこい件について
試験会場は体育館みたいになっていた。
「うわ…広い」
さすが専門学校。
自分の番号の席について、暗記本をじっと読んでいる。
ちゃんとこの本、覚えきれてる…?
一気に不安になってきた。
いや、大丈夫。ちゃんと覚えてる。
頭で無理矢理そう思うようにする。
『大丈夫』
椋太郎のその言葉をリピートさせる。
よし、大丈夫。
時計が開始時間を示した。
スーツ姿のおじさんなどがどんどん入ってきた。
そして、あたしは目を見開く。
そこにはあたしの大好きな…ファッションデザイナーもいた。
専門学校を目指しているということもあり、そこにいる人達全体が戸惑っているように見えた。
「なんでこんなところに…?」
「先生辞めたのかな?」
なんて声もする。
ファッションデザイナーさんはマイクを受け取る。
「今年の、合格基準は…私です」
え?どういうこと、なんだ…?