ナンパ男がしつこい件について




「唯花」



「ん?」



椋太郎があたしを呼んだので、当然のように振り向く。




「一回だけ、キスしてい?」




「え、まあ…うん」




ありがと、と言うと人気の少ない、




裏道へと出た。




椋太郎はあたしの後頭部を優しく支えて、




一度だけ、長いキスをした。




でもそのキスは今までとは少し違って。





甘くも、荒々しくもなくて。





ただただ、優しいキスだった。






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