ナンパ男がしつこい件について
椋太郎はあたしの手を強く強く握る。
ここ。
あたしが椋太郎に連れてかれそうになったときの…
懐かしい。
「本当に大丈夫?」
「え、うん」
扉を開けた瞬間、大音量の音楽が耳をつんざく。
昼まっから騒ぐ大人たち。
チラチラと、あたしたちを見てくる人がいた。
「椋ー、そのかわいこちゃんが彼女?」
「そうだよ」
それだけを返して、どんどん進んでいく椋太郎。
片桐優雅が見たこともない女の人といた。
「…………来たな」
「ああ」
片桐優雅はこっちを見た。