ナンパ男がしつこい件について
「足…痛い…」
つい本音が出てしまった。
「椋太郎…」
息が切れる。肺が痛い。口の中が血の味がする。
「会いたい」
そう思っても、どれだけ見渡しても、
いない。
携帯が鳴った。
『椋太郎いた?』
「いない…家、帰ってくるかも知れないけど」
『いや、あいつのことだから家には帰ってこない。電車のってもう他の所行ったのかもしれねぇ』
あたしは、しゃがみこんだ。
「椋太郎にまた、会えるかな?」
『ああ、あいつがこれで終わるような奴じゃねえって知ってるだろ』
片桐…いい奴じゃんか…
鼻をずずっとすすった。