ナンパ男がしつこい件について
「大丈夫です、さよなら」
「あっちょっと待っ…」
その人の動きが固まる。
片桐がナンパしてきた男の手首を握る。
「こいつに触んな」
「あっすいません…!」
血相を変えて去っていく。
「…泣くなってそんなに」
「だっ…て…もう会えないような気がしてきた」
「お前らしくねえだろ。付き合ってるときも追っかけ回しあってたくせに」
違う。
「椋太郎がいっつも追いかけてきてくれたんだよ…」
「俺にはそうは見えなかった。お前だって充分椋太郎のこと追いかけてるように見えた」
そうなのかも知れない…
「頼むから泣き止め。また椋太郎に殴られるだろ、俺が」
「そ…だね」