ナンパ男がしつこい件について
「椋、か…」
あいつの笑顔、むかつくくらいに脳裏に残ってる。
頭を撫でられた時の優しい感触。
抱きしめられた時の甘い香り。
たまに使う普通の女の子なら一発で恋に落ちる囁き。
全部が頭の中を巡りめぐってる。
『唯花』
小声で華和に話しかけられる。
『にやけてる』
少し笑って顔を指差される。
気がつくと口角が上がっていた。
「うっそ…」
目の前の教科書を読んでいたはずだったのに。
いつ当てられても大丈夫って思ってたのに。
ものすごい気の反れ方してしまった。