甘い悪魔。
ポカンと口を開けて動こうとしない椎名さんにイラッとする。
「さっさと起き上がらないなら…「あ!ご、ごめん」
椎名さんは慌ててあたしの手を取って、立ち上がった。
あたしもそんな怒るつもりなかったのに。
椎名さんは制服についたほこりを払っている。
一通り払い終わると、椎名さんはジッとあたしを見てきた。
この顔は何言われるかビクビクしている顔。
あたしの言いたいことは一つ。
「…プ、プリント…ありがとう」
「……っ!」
片手に持ったプリントをヒラヒラと動かす。
あたしの言葉に椎名さんは最初驚いていたけど、やがて笑って「うん!」と言った。
椎名さんの笑った顔、初めて見たかも…
こんなあたしに笑ってくれる同い年の女の子は彼女だけかもしれない。