甘い悪魔。
え、この人正気?
口移しであたしに薬を飲ませる?
じょ、冗談でしょ?
と考えていても、あたしの隣に和穂が座ったことで焦りに変わる。
「ちょ、本気で言ってんの!?そんな冗談通用しないよ!?」
あたしの言葉に構わず、和穂は薬の封を開け取り出した。
「冗談で言ってるように見えるか?この目が」
見えない。
ずっと近くにいるから分かる。
この和穂の鋭い目つきは本気だ。
てか何で口移し?
口開けさせて飲ませるとか、サンドイッチに混ぜるとか他に方法はいくらでも…
あたしの思考は和穂が近付いて来たことにより、停止した。
ゆっくりと距離を縮めてくる和穂。
口移しなんて言うから、和穂の口を意識して見てしまう。
妖艶に潤った唇。
あたしは反射的に後ずさる。