[B L]だからスキって言ったのに
───────…少し、昔話をしよう。
俺と天野は、小学校3年からの親友だった。
天野は当時もイケメンで、誰にでも明るく優しい、モテる奴だった。
俺はまだ、このときは天野が親友として誇らしかったんだ。
気持ちに気づき始めたのは、中1の秋だった。
たまたま、天野は学校を休んでいた。
クラスで好きな奴の話題になって、俺は「よく分からない」と答えた。
そして、クラスの奴に教えてもらった。
恋がどんな気持ちなのかを。
「恋ってのは、なんかこう、気づけば相手のことを考えちまう、みたいな?」
「えー、中原、乙女~!!」
「うっせ」
「えー、なんだろ、相手が誰かと楽しそうに話してると、イライラする、とか?」
「ほー、立花、オマエいっちょ前に嫉妬すんのか。」
「あたしはしないっつの!!」
俺はそれを聞いて、正直ド肝が冷えたね。
だってそれは、まるで天野への感情を見透かされてるようだったから。
そう、すべて当たってたんだ。
あれは恋だったんだよ。
それから俺は、その感情を否定し続けた。
男に恋など有り得ない、と。
だけど、押さえつければ押さえつけるほど、膨らむ一方だった。
そして、中2の夏。
俺は、見てしまったんだ。
「あの、天野君!…す、好きです!」
体育館裏で、天野が告られていた。
「あー、わり、考えとくわ。」
「うん!!」
女の子は、去っていった。
もう、頭の中が真っ白になって。
考えとく?
それって、つき合うか迷ってるってこと?
『ダメ』じゃなくて、『だめかもしれない』ってこと?
そんなの、嫌だ
天野は、俺だけの─────────…
「…天野。」
「ああ、夏音。見てたのか。その、あの、声ぐらいかけろよな!」
なんでそんなあたふたする必要があるんだよ。
親友の俺より大切な存在が出来そうだから、隠そうとしたのか?
「天野、好きだ。」
「は?かの───────
───…ンッ!?」
俺は無理やりキスをした。
ダンッ
そしたら、急に突き飛ばされて。
まぁ、当たり前だよな。
「からかうのも、いい加減にしろ…!」
天野は、少し涙ぐんでいた。
ああ、こんなにも嫌だったのか、と。
「ゴメン。」
俺はそう言って、その場から逃げた。
次の日から、1ヶ月。
天野は学校に来なかった。
そして、あれから一度も学校に来ないまま転校した。