[B L]だからスキって言ったのに
他人を傷つけた痛み。
昔の天野を傷つけたようで。
「ははっ…やっぱ俺、最低…」
こんな時まで、天野、天野って。
“津白杏里”という選択肢がないのは、もう当たり前なのか。
「…夏音。」
気付けば、屋上の入り口に天野が立っていた。
「あぁ、天野。
無様だろ、これ。」
俺は、赤くなっているであろう右頬を指差した。
「あぁ、赤くなってる…し、口切れてる。」
血が出てたのか。
俺は親指の腹で、口の端から垂れた血を拭った。
「昔の天野、傷つけちゃったな。」
「…オマエの中で、オレは昔の、2年前のままなのかよ。」
天野はふてくされたように言った。
なんだかその顔が可愛くて。
あったかいきもちになった。
「あ、夏音ようっやく笑ったな!!
オマエ最近笑ってなかったぞ!!!」
「いや…天野人のこと言えないし。」
「だぁって、オレはしょうがねーだろ!!」
「なにがだ、独占欲丸出しすぎるんだよ!!」
「なにを!?」
そんなたわいもない会話が、俺にとっては最大の幸せだった。