坂下さんちの碧くんは、
プロローグ




少し肌寒くなってきた


秋というには少し寒く感じるこの季節を私は嫌いじゃない


とても苦しいことも多かったし
何より
一番大切なものとの別れを経験した季節だと言うのに




それでも嫌いになれないのはやはりあの時間を私自身がとても愛していたからか…



明日私はお見合いをする
お見合いというよりは縁談というべきか…

別にこの縁談が始めてというわけじゃない
それこそ飽きるほどしてきた

というのもずっと待っている人がいたから


でもきっとこれが最後になる


今回は相手側がえらく私を気に入っているそうだ


しかも相手側の家柄がとてもよく父の親友の息子と言うこともあって

断るなんて出来ないだろうし
私もそろそろ親孝行するべきなのかもしれない

あの人を待つのは
もう潮時なのかもしれない


名前はきいたが
それ以外の事は何も知らない

知らなくていい

会話も弾まなくていい

相手側がそれで破談にしてくれればもうけものだ


もちろんそんなこと多分ないだろう


21歳で子持ちをえらく気に入るということはそんなことでは破談にならないだろう


あぁ
なんだろう
今日はやけにあのときのことを思い出す


今日は寝られそうにない




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