友を待つ猫来る

カランと音がして他にお客の居ない店に誰かが入って来た。


僕は入口に背を向けて座っていたが、それが彼女だと分かった。


ヒールの音が聞こえて彼女は僕の前に座る。


秋物の茶色のコートに薄い緑のレイバンのサングラスをかけた彼女が、前に座り笑った。


彼女は、前と全く違わないようで、実は決定的に変わっていた。


僕の前に居るのは猫だったのだ。


人間の格好をして人間のような姿をした猫だった。


「あ!残念。さすがだよね。そんなに驚いてないでしょう。」


彼女は、少し残念そうに鼻に皺を寄せながら笑う。


驚いてない事はもちろんないが、何故か飛び上がって驚いたり昔ミッキー・ロークが、ボクサーとしてドームで試合をして猫パンチで勝ってしまった時ほどの衝撃はなかった。

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