トライアングル
美伽 編
「ねぇ、今度食事にでも行かない?」
少しだけ遅い休憩を取っていると、耳元でそう囁く声がした。
ぱっと振り返ると、そこには、後ろ頭を照れ臭そうに掻きながら立ち尽くす彼が居た。
「……えっ?」
「ダメ?」
「だ、だめじゃあないけど……」
なぜ私など誘うのだろう?
私が不思議そうに彼を見詰めると、彼は照れからか「じゃあ、今度誘うから」と早口にそう告げた。
それからあっと言う間に私の前から立ち去って、私はそんな彼の後ろ姿をぽかんと見詰めていた。
彼、萩原祐人〈ハギワラ ヒロト〉は同じホテルに勤める先輩。
主に営業を担当している。
私、坂口美伽〈サカグチ ミカ〉は今年入ったばかりの新入社員。
今はホテルのフロントを任されている。
そんな彼との接点は、今までの私には殆どない。
なのに、なぜ?彼は私を誘ったんだろ?
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