トライアングル



山田さんを引き受けてしまった私は、帰る方向の違う萩原さん達と別れを告げ重たい山田さんを肩に歩き出した。



そして、すぐ近くのバス停に着くととりあえず山田さんをベンチにすわらせて、


私は萩原さん達の後ろ姿を見送った。



萩原さんの隣にはなぜか瑠菜がべったりと寄り添っていて、そんな姿をみた途端泣きたくなった。



別に山田さんが悪い訳じゃあない。



帰る方向が違うのは仕方のない事だから。



でも……。



もう少し一緒に居たかった。
お話しもしたかった。



せっかく萩原さんから誘われて嬉しかったのに、そして、自分の気持ちにも気付いたのに、まるっきり空回りな私の思いになんだかやるせないし、悲しくなる。



それに今日の萩原さんは本当に遠い存在の人だった。



あの日、ふたりっきりで食事に行った日の萩原さんとはまるっきり別人で、


結局あの晩に借りたマフラーは私の鞄の中に取り残されたまま、私に山田さんの介抱を押し付け萩原さん達は帰ってしまった。






「ねぇ、泣いてるの?」



寝ていた筈の山田さんがむくりと起き上がり、私の顔を覗き込む。



気付かなかったけど、山田さんに言われた通り私の頬に涙の跡がいく筋もついていた。



「な、泣いてません!」



その涙の筋をゴシゴシと袖で擦り、私は何でもない振りをする。



山田さんはそんな私を見て、くすりと笑みを溢した。



「坂口さんって、結構意地っ張りなのね」

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