トライアングル
瑠菜 編
「ねぇ、今日大丈夫?」
耳元でちょっと低めの甘い声で囁く彼は私の所属する部署の上司。
カウンタ越しにもフロントにも誰も居ないことを確認して、彼はそう囁いた。
「うん、大丈夫」
離れていく彼の横顔を見詰めながら、私はそっと微笑んだ。
彼はそんな私を見て満足そうにちょっとだけ頬を緩める。
けど、いつ何時誰に見られているか分からないから、だからすぐにいつもの上司の顔を戻る。
「後で連絡する」
「うん」
二人して横に並び顔も見ずに会話。
こんな会話すら私はドキドキしてしまう。