もう一度抱いて
驚くキョウセイを無視して、私はキョウセイの髪をひとつにまとめた。


「わ…、サラサラだね」


「おーい、何やってんだよー」


すいてあるせいか量は少ないけれど、サラサラでとても綺麗な髪だ。


手首につけていた赤いヘアゴムを外すと、私はキョウセイの髪をひとつにしばった。


「でーきたっ」


そう言って、キョウセイの顔を覗き込んだ。


「うん。なかなか似合うじゃん」


「ちょっ、あんま見るなよ。恥ずかしいから」


焦るキョウセイが面白くて、私はクスクスと笑った。


「あ、でも結構涼しいな」


「でしょ?そのゴムあげる。バイト中使いなよー」


私がそう言うと、キョウセイはちょっと恥ずかしそうに目を伏せた。


その時、山から心地よい風が吹いて来て、私とキョウセイの間をすり抜けていった。


それと同時に。


同じ色のヘアゴムでしばったおそろいの髪がゆらゆら揺れて。


なんだか、幸せな気持ちになった。


私とキョウセイはしばらく木陰のベンチに腰掛けて、美しい山の景色を眺めた。
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