もう一度抱いて
ペンションでの曲作りは本当にはかどるらしく、キョウセイは次々に曲を作っていった。


それに合わせてベースの相原君も、ドラムの小山君も次々に音を完成させていく。


曲が沢山出来ていくのは素晴らしいのだけれど、これらの曲全てに詩をつけなくちゃいけないんだと思うと、なんだか私はゾッとしていた。


キョウセイは焦らなくていいと言ってくれたけれど。


そんなある日の夜のこと。


なかなか眠れなかった私は、外の空気を吸うため、庭に出ていた。


この辺りは昼間は暑いけれど、夜は少し肌寒い。


私はTシャツの上にパーカーを羽織り、コテツのいる犬小屋まで歩いた。


このペンションは山々の景色も素晴らしいのだけれど、さらに素晴らしいのが夜の星空だ。


満天の星空が果てしなく広がり、キラキラして今にもこぼれ落ちて来そうだ。


「クゥン…」


コテツがせつない声で鳴きながら、犬小屋から出て来る。


私はコテツの前にしゃがみ込んだ。


「ごめん。起こしちゃったかな?

眠れないんだ…。

ちょっとだけ、ここにいていい?」


コテツは私に身体をすり寄せるように、お座りをする。


私はコテツの背中を撫でながら、美しく輝く星空をじっと眺めた。


その時だった。


背後で、ザッという足音がした。


「あれ?永瀬…?」
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