もう一度抱いて
え…?


今、なんて言った…?


「亡くなった…?」


震える声を出すと、キョウセイはひどく悲しい目をしてコクンと頷いた。


「姉貴が死んですぐは音楽なんて、とてもじゃないけどやる気になれなくて。

ギターを弾くどころか、音楽を聴くのでさえもイヤになってた…。

だからもう一生音楽なんかやらないんだろうなって漠然と思ってたんだ」


「キョウセイ…」


「だけどさ。

高校入学してすぐの頃だよ。

仲良くなった同じクラスの友達が、軽音部に入ってたんだ。

入ったはいいけど、バンド組むヤツがいないって。

一緒にやってくれるヤツ誰かいねーかなって、皮肉にもそいつ、俺の前で毎日のように呟くんだよ…」


そう言ってキョウセイが、鼻からフッと息を吐いた。


「それでちょっと思ったんだ。

もしかして、姉貴が俺に音楽やらせたくて、コイツに言わせてるんじゃねーかって。

バカみたいだけどさ、そんなことを思って…。

それで、またギターを手にしたんだ…」
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