もう一度抱いて
「わぁ、すごい」


目の前に広がる雄大な山々の景色。


今日は曇り空のせいか少し霧がかってはいるけれど、それでもペンションからの景色とは全く違って、さらに遠くの山の輪郭が見えて、まるで一枚の絵のような美しさだ。


「すげぇな。これは感動するよな…」


キョウセイもこの景色の素晴らしさに目を細める。


私達はとりあえず、屋根と木のベンチのある場所へと移動し、そこに二人で腰かけた。


アルバイトを始めてから、キョウセイとはよく二人きりになっているような気がする。


キョウセイとの時間は優しくて、静かで、心が落ち着くから好きだな…。


「永瀬。今日は何も考えずにさ、山の景色を見て、自然の音を聴いてたらいいよ」


キョウセイが優しい目で笑う。


「うん。わかった」


私もニッコリ笑った。
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