もう一度抱いて
キョウセイはしばらく私の横で本を読んでいたけれど、急に立ち上がり周りを散策し始めた。


「永瀬。俺、もう少し奥まで散歩して来る」


「えっ?ひとりで?」


「うん。永瀬はしばらくひとりでここに座ってて」


「ど、どうして?」


私も一緒に行きたいのに…。


「ひとりで静かにしてたら、何かインスピレーションが浮かぶかもしれないから」


え…?


インスピレーション?


「なんでもいい。ふと浮かんだイメージとか、言葉とか。
それをメモしておいて。
作詞に使えるかもしれないからさ」


「…う、うん…」


へぇ。


そういうものなのかな?


「あ、でも無理はするなよ?

浮かんだら…でいいから。

じゃ、後でな。

すぐ戻るから」


「わかった。行ってらっしゃい」


私がそう言うと、キョウセイは右手を上げて、さらに山の奥へと進んで行った。
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