もう一度抱いて
パッと目を開けた時には、辺りはすっかり薄暗くなっていた。


ぽつりぽつりと降っていた雨が、次第に強さを増していく。


私は屋根のあるところにいるから大丈夫だけど、キョウセイは大丈夫なのかな?


私は立ち上がり、さっきキョウセイが向かった山道の方を見た。


どこまで行っちゃったんだろう。


私の心配をよそに、雨はどんどん激しさを増していく。


絶対ずぶ濡れになってるよね。


無事、戻って来れるといいけど…。


そう思っていた時だった。


急に辺りがピカッと光り、目の前が真っ白の世界になった。


「えっ?何?」


思わず声を上げると、その直後ドーーーンと割れるような凄まじい音が周囲に轟いた。


私は耳を塞ぎ、身体を曲げてしゃがみこんだ。


今まで聴いた事もないような、ものすごい爆音。


どうしよう。


怖い…。


しばらくするとまた稲光が走り、ドーンドーンと太鼓を叩くような太く大きな音が何度もこだました。


それは長く鳴り続け、柱をビリビリと揺らす。


私は稲光が見えるたびに震え、雷が鳴るたびに悲鳴を上げていた。


雨はますます激しさを増し、地面を濡らしていく。


山の天気って変わりやすいって言うけど、こんなにひどい雨が降るなんて。


「怖いよ、キョウセイ。早く戻って来て…」


山の中にひとりでいることが急に怖くなってしまい、私は膝に顔を伏せ、子供のように泣いてしまった。


しばらく震えていると、急にガシッと腕を掴まれ、無理矢理立たされた。


何がなんだかわからず、思わずぎゅっと目を閉じると、冷たく濡れたTシャツが私の頬に当たった。
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