もう一度抱いて
「そのこと…なんだけどね。

あなた、昨日のこと覚えてないんでしょう?」


私の問いに小さくため息をつくと、彼はコクンと頷いた。


「あぁ…。覚えてない…」


視線をテーブルに落とす彼。


「ごめんな…。
なんてお詫びしていいか…」


この人、意外と真面目な人なのかもしれない。


逃げ出さずに、こうしてちゃんと謝ってくれているんだもの。


「あの…。
実はね。
私も昨夜のこと、全然覚えてないの」


「え…?」


パッと顔を上げた彼の涼しげな瞳が大きく見開いた。


「昨日は飲み過ぎちゃったんだ。

ちょっと色々あって、ムシャクシャしてたし。

どうしてあなたとあんな展開になったのかはわからないけど。

でも、ちゃんと避妊もしてくれてたみたいだし。

あの…。

お互い、昨日のことは忘れませんか?」


「え…。でも…」


「酔ってあんなことをしたのは初めてなの。
すごく恥ずかしいし、後悔してる…。
だから…。
出来れば、なかったことにしたい…」


私がそう言うと、彼は椅子の背もたれに身体をもたれた。
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