もう一度抱いて
「それでいいの……?」


彼は私を真っ直ぐに見ている。


その瞳がすごく綺麗で、なんだか目を逸らせない。


「いいも何も…。
私も悪かったの。
バカみたいに飲んじゃったから。
そんなにお酒が強いわけでもないのに…」


少し笑って見せると、彼も少しだけ口角を上げた。


「アンタもなんだ。
俺も、酒はそんなに強くない…」


へぇ…。


そうなんだ…。


「強くないのに、どうしてあんなに飲んでたの…?」


私がそう聞くと、彼は視線を窓の外に移した。


「あぁ…。ちょっと友達とケンカして…」


友達とケンカ?


ちょっと意外かも。


「アンタは?」


「え?」


「どうしてあんなに飲んでた…?」


うっ。


それを言えっての?


「ごめん…。それは秘密…」


一年付き合ったゼミの先輩にフラれたから…なんて。


情けなくて言えない。


そんな私を察してか、彼はそうかとだけ言って、それ以上は何も聞かなかった。

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