もう一度抱いて
しばらくぶっ通しで練習した後、俺らは少し休憩を取ることにした。


みんな、ぞろぞろとスタジオを出て行く。


俺もベースをギタースタンドに立てかけて、スタジオの外に出た。


キョウセイは木陰のベンチでタバコを吸うて、亜美ちゃんと小山は仲良さそうにペンションへと入って行った。


二人で冷たいモンでも飲むんやろ。


里桜ちゃんはと言うと、柴犬のコテツと楽しそうに遊んどる。


やることが、やっぱ子供っぽいよな。


俺は持って来ていたペットボトルの水を飲みながら、キョウセイの隣に座った。


ここに座ると雄大な山がよう見えて、なおかつ、コテツの犬小屋が真正面に見える。


ええ景色や…。


しばらく俺は、ボーッと山の景色を眺めた。


キョウセイもボーッとして、タバコを吸うとる。


ん?


と思っとったけど。


もしかして。


里桜ちゃんを見てたんちゃうんか?


俺は水を飲みながら、チラチラとキョウセイの横顔を盗み見た。


キョウセイは真正面の顔以上に、横顔がカッコエエ男やねん。


まぁ、美形の部類やな。


ちょっと細過ぎんのが残念やけど。


でもそれは俺、人のこと言われへん。


俺も、ガリガリやからなー。
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