もう一度抱いて
コテツの頭をずっと撫でとる里桜ちゃんが、なんやかわいそうになってもうて。


俺は里桜ちゃん隣にしゃがんで、その小さな肩を抱き寄せた。


「ごめんな。

俺が悪かってん。

余計なこと言うたから」


「ううん。

相原君のせいじゃない。

恋人がいる人を好きになった、自分が悪いんだから」


そう言って笑う里桜ちゃんがいじらしうて。


なんや泣きそうになった。


こんなええ子やのに。


どう考えたって、あの朝田さんよりずっとええ子やのに。


なんでこんな子が失恋せなアカンねん。


思わず腕にぎゅっと力を込めたら、俺の頬に里桜ちゃんの頭が当たった。


俺と同じシャンプーの匂いがする。


「泣いてもええよ」


「え…?」


「泣くのずっとガマンしとったんやろ?

泣いたらええ。

それくらい俺が受け止めたるから」


俺がそう言ったら、里桜ちゃんはしばらく黙ってたけど。


そのうち、



その小さな肩が、



静かに震え始めた。

< 224 / 479 >

この作品をシェア

pagetop