もう一度抱いて
ふたつの告白
ライブハウスの前で小山君と亜美と別れ、私は相原君と電車に乗っていた。


相原君は私を心配して、部屋まで送ると言ってくれて、結局アパートの前まで来てしまった。


「ありがとう。
また送ってもらっちゃったね」


前回のライブの後も、酔った私を心配して、玄関まで送ってくれたっけ。


「ええねん。
また過呼吸になってもアカンからな」


なんか、みんなに心配かけてばっかりだな、私。


「あ、よかったら、お茶でも飲んで行く?」


「んー。まだ終電まで時間あるか。
ほな、ちょっとだけ」


私は玄関の鍵を開けて、相原君を部屋の中へ入れた。


早速冷蔵庫の中から麦茶を出してグラスに注ぎ、机の上にコトンと置いた。


「いただきまーす」


そう言って相原君は、一気に麦茶を飲み干した。


「ここが里桜ちゃんの部屋かー。俺の部屋より若干広い気ーするわー」


「そうなの?」


「うん、俺の部屋狭いねん。
しかも窓が西向きやから暑いしなー。エアコンなっかなか効かへんねん」


「それは暑そうだね」


思わずクスッと笑ったら、相原君もニッコリ笑った。


「やっと笑たな」


「え?」


「ライブの後、全然笑わへんかったから」


「あぁ…」


だって、申し訳なくて。


とてもじゃないけど、笑う気になんてなれなかった。
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