もう一度抱いて
「実家に帰って、頭を冷やして考えた結果なの。

私がここにいると、みんなに迷惑がかかってしまうから」


「そんな…。里桜…」


亜美ちゃんが泣きそうな顔をしている。


「この前のことだったらいいんだよ。そんなに気にしないでよ。
また頑張ればいいんだから」


小山が優しく諭すように言うけど、里桜ちゃんは首を横に振った。


「もう、歌えそうにないの…。

みんな気づいてると思うけど、私…キョウセイが好きなの。

彼を思うとつらくて悲しくて…、恋愛の曲なんてもう歌えない…」


「里桜ちゃん…」


「歌おうとしたら詰まってしまうの。

こんなんじゃ、このバンドのボーカルは務まらないでしょう?

こんなことになって、本当にごめんなさい…」


そんな…。


そんなん…。


絶対イヤや…。


「待って、里桜ちゃん。考え直してーな。

俺、イヤや。

他のヤツがボーカルになんの、もうイヤや。

俺は里桜ちゃんがええ。

頼む。

俺も小山も亜美ちゃんもおる。

みんなで支えるから。

それでもアカンのか?」


俺は必死に訴えかけた。


でも、里桜ちゃんは首を横に振った。
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