もう一度抱いて
「これ、歌詞を書いたノート。
もし、次のボーカルの子が女の子だったら、この歌詞使ってくれていいから」


そう言って、里桜ちゃんが俺にノートを差し出した。


ペンションにいる間、彼女がずっと大事に持っていたノート。


擦り切れて、すっかりにボロボロになったノートを…。


「本当にありがとう。

すごく楽しかった。

今度はお客さんとして見に行くね。じゃあ…」


そう言って里桜ちゃんは、走ってスタジオを出て行ってしまった。


「ちょっ、待って!」


そう言って追いかけようとした途端、俺の手からさっき受け取ったノートが床に落ちた。


その時、あるページが開かれた。


「え…、これ何?」


こんな歌詞、見たことあらへん。


文字数から言って、バラードやろうけど。


こんな曲、なかったはずや…。


俺がじっとノートを見ていたら、亜美ちゃんが俺の近くに来た。


「何見てるの?」


「これ…見て」


「これがどうかしたの?」


「初めて見る歌詞やねん」


「……そう言われればそうね。

こんな歌詞の曲、聞いたことないわ。

っていうか、これ!

よく見てよ!」


亜美ちゃんに言われて、俺もハッとした。



これは…。




この歌詞は…。





その時、ガチャンと青い扉が開いて、キョウセイがスタジオに入って来た。
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